とき:2007年9月23日(日)
ところ:新潟市朱鷺メッセおよび幕張シーポート(当社内)
新潟県中越沖地震の被災地域を対象にした「がけ崩れ予測メール」の経過報告とこれをきっかけとした高度情報化社会に適合する新しい減災サービスのあり方を、有識者を交えながら「がけ崩れ予測メール」登録者を中心としたサポーターの皆さんとともに考える談議会を開催しました。それぞれの立場で考え、自由に発言、議論した内容をまとめました。
参加者
「がけ崩れ予測メール」登録サポーター、新潟県内自治体防災関係者、自主防災組織関係者、片田敏孝氏(群馬大学教授)、永井正直氏(日本情報通信株式会社)、吉岡秀樹氏(災害ボランティア)、廣川州伸氏(コンセプトデザイン研究所)、石橋博良(ウェザーニューズ会長)
■できない「防災」ではなく、今できる「減災」を本音で考えたい
- 日本は、これまで災いを防ぐ「防災」を考えてきた。しかし、災害があったが人は死ななかったという「減災」を考えたい。
- 減災が世界の常識なのに、日本は防災ができるような錯覚を持っている。今できることから始めることができれば。減災ができるのか、知恵を出して、本音を出し合っていく社会をつくるべき。
■「情報リテラシー」が高い人とそうでない人、別次元で考えるべき
- 群馬県の台風9号では、土砂、河川、気象情報が行政から出て「危険」は伝わったが、受け手のリテラシーがなく、情報の共倒れとなった。「がけ崩れ予測メール」に登録した人は、リテラシーが高い人なので、情報はたくさんあったほうがいいが、一般のおじいちゃん、おばあちゃんは別次元で考えるべきだと思う。
- 「がけ崩れ予測メール」の登録者は、自ら積極的に携帯電話を使って情報にアクセスし、 コミュニケーションをするリテラシーの高い会員。ウェザーニューズは、そこに心を報せる双方向のコミュニケーションを提供していきたい。
■災害時はインフォメーションではなく、コミュニケーションが重要
- 災害インフォメーションといっている限り、情報は伝わらない。自分は死ぬという状況想定を人間はしない。台風9号でも避難勧告が出されても避難しない住民が少なからずいた。それに対して群馬県藤岡市では、役所が一軒ずつ勧告に行ったら全世帯が避難したとのこと。ただ避難勧告を出すだけでは「情」が伝わらないことがわかると同時に、広い地域にどう対応するかという課題も残る。
- 高度情報社会は一方通行のインフォメーション社会ではなく、双方向のコミュニケーション社会であるはず。ウェザーニューズは、コミュニケーション社会の実現に向け、できることからサポーターとともに進んでいきたい。
■今そこにある危機に対応できる、生の情報が欲しい
- ボランティアで「救援隊」をやっているが、プロではないので、自分たちでお金を出して活動している。新潟県中越沖地震への活動で、一番使えたのは携帯メールで送られてくるボランティアからの情報。東京にいるスタッフが「がけ崩れ予測メール」を見ながら、新潟の現地スタッフに指示を出していた。「がけ崩れ予測メール」が止まった時は、とてもめげた。今そこにある危機にどう対応するか、生の情報が欲しかった。
■「情豊通心」…報せて終わりではなく、心を通わせていくという関係が大事
- 10年ほど前、情報とは人と人の間の情けを通わす手段だという認識から「情豊通心」という言葉を作った。しかし現実問題として、日本はハード=サービスという認識で進んできた。今ようやく学校では先生と生徒、病院では先生と患者など、情を伝えることが求められている。豊かな心が通いあう『情豊通心』の時代には、報せて終わりという関係ではなく、一対一で話をし気持ちを通い合わせていくという関係が重要だ。
■情報に弱い人たちのために、情報に強い人が支えていく
- 情報の弱い人たちを、情報リテラシーのある人たちが支えている。それこそ情けに報いること。災害時のボランティアの人たちから出た感覚が重要。前に行く人を助けるためにやれることをやろう。
■目の前に情報を求める人々がいるのに、それに応えられない会社にはしたくない
- 「がけ崩れ予測メール」は、気象か地象かという分類学上の問題ではない。日本のあり方そのものを考える時代にきた。なぜ「がけ崩れ予測メール」の無料サービスを始めたのか、中身を吟味することなく、ただ法律を守れという。その行為には誰かが怒り、訴えなければならないと感じた。1700人のメッセージから勇気をもらい、そこにある「情」に報いたいと思う。One with all , all with One.の気持ちだ。
■「行政vs民間」ではなく、国民運動への契機にしてほしい
- 行政は末端が判断と責任を負っている。この談議会が国民運動になればいいと思う。
- 自主防災の仕事をしていますが、情報の発信基地として視野を広げてくれればいい。
- 行政の防災、減災の取り組みも過渡的な時期。ウェザーニューズの行動自体はいいことなので、「減災」に何が必要かを問い、発展させて欲しい。
- 交通安全運動が浸透するのに何十年もかかっている。国民的な運動として住民自身が意識を持って進めることが重要。
- 国民的に皆が力を合わせていけば何かできるのではという視点で、一歩でも前にいきたいと思う。
ウェザーニューズでは、このシンポジウムを通じて、一人ひとりに、まだできることがあり、みなさんの心が動かないと、減災にならないことを感じました。またこれから、おじいさん、おばあさんなど、災害情報弱者に対してのサービスもウェザーニューズでやって欲しいと、強く背中を押されたように感じています。今後、地元の消防団、自治会、災害ボランティアなどの方々と共同で減災対策をする共助を考えていきたいと思います。
次回は11月4日(日)、「共助による減災を考えるシンポジウム(談議会)」を行う予定です。