発行日 : 2008年10月06日

気象のプロと地域の人の“感覚”の融合で予測不能なゲリラ雷雨の捕捉に成功

~ 今夏における東京都のゲリラ雷雨発生回数は172回、事前捕捉率は76.7% ~

株式会社ウェザーニューズ(所在地:東京都港区、代表取締役社長:草開千仁)は、今年の夏に例年より多く発生した“ゲリラ雷雨”に関する傾向を発表するとともに、その被害軽減のために一般の方と共に実施した取り組み内容についてまとめました。今回、ウェザーニューズでは、全国1万人以上の方から寄せられる “感覚”に基づく一般の方の感測情報を収集・解析することで、予測不可能と言われる“ゲリラ雷雨”を、東京都においては平均76.7%の確率で事前に捕捉することに成功しました。

今夏における“ゲリラ雷雨”の傾向

今年は平年に比べて、太平洋高気圧の勢力が弱い時期が7月〜8月にありました。このため、南海上から暖かく湿った空気が流れ込みやすい状態でした。さらに、日本列島の上空には、寒気が流れ込みやすい場となり、下層には暖気、上層には寒気と、積乱雲が発生しやすい状態が続き、至る所で“ゲリラ雷雨”が発生しました。実際に、7月30日〜9月15日の雷日数も、平年より東京では2.9倍の10日、大阪では2.3倍の12日、福岡では1.9倍の13日、名古屋では1.5倍の9日という日数が出ており、全体の傾向として、およそ2倍あったと言えます。特に、東京では今年観測された雷日数が、すでに年間の雷日数を超え、観測史上最多となっています。

なぜ“ゲリラ雷雨”は予測不可能か

ゲリラ雷雨をもたらす雷雲は、“急速”かつ“局地的 ”に発達します。まず、“急速”に発達するため、従来の気象レーダーやアメダスの10分単位観測では、急速な雲の発達をとらえることができません。例えば、従来の気象レーダーは、雨雲が2km以上になって初めてエコーとして、確認することができますが、この時点ではすでに雲が発生してから、10分以上経っている可能性があります。また、2km以上に達した雨雲はすでに雨を降らせている可能性が高く、その数分後には激しい雷雨をもたらします。つまり、気象レーダーで雨雲をとらえてからでは、手遅れになることが多くあります。そして、雨雲の大きさが数km〜十数kmと "局地的"に発達するため、スケールの小さい気象現象を苦手とする従来の気象予測モデルでは捉えることができません。さらに雷雨となっても局地的なため、アメダスでは捉えられない場合があり、“ゲリラ雷雨”は予測不可能といわれています。


*今年と平年の雷日数の比較

対象期間

東京 愛知 大阪 福岡
7月30日〜9月15日 10回 9回 12回 13回
期間の平年比 2.9倍 1.5倍 2.3倍 1.9倍

予測不可能を予測可能にした、地域の人の“感覚”

一般の方からのリポートを取り入れたレーダー画像

メール登録者と防衛隊人数の推移

ウェザーニューズでは、“ゲリラ雷雨”への取り組みとして、“ゲリラ雷雨”が発生する可能性がある際、その危険性を携帯電話に可能な限り事前に知らせる『ゲリラ雷雨メール』を7月30日から展開してきました。『ゲリラ雷雨メール』は、一般の方からの協力をもとに展開するサービスで、全国各地の一般の方から寄せられる膨大な雷雨状況に関するリポートをもとに“ゲリラ雷雨”の予測を行います。“ゲリラ雷雨”に関するリポートをする一般の方は、“ゲリラ雷雨防衛隊員”と呼ばれ、1万人以上もの特定の登録会員が行います。“ゲリラ雷雨防衛隊員”は、実際に見た雷雨の状態をリポートすることはもとより、「湿った風がふき始めてきました」や「急激に雲が発達しています」など、従来の観測では捉えることの出来ない、人の五感を使った“感覚”による情報もリポートします。“ゲリラ雷雨防衛隊員”は、まず、事前に地点を登録してもらい、その地点で“ゲリラ雷雨”の可能性がある気象条件が揃った場合、携帯電話を使って、その地点を重点的に感測します。感測は、ウェザーニューズからメールが届いたタイミングで実施してもらい、届いたメールのリンク先サイトで、“現在の天気” “雲のある方角”“雷鳴の有無”、そして、“肌で感じた感覚”などを入力し、写真などを併せて送信します。“ゲリラ雷雨”の予測には、1万人の“ゲリラ雷雨防衛隊員”の他、『10分天気予報』と呼ばれる10分単位での降雨情報の利用者100万人(月間ユニークユーザー数)からのリポートも活用し予測を行いました。このように、従来の気象予測技術だけでは捉えられない、全国各地から寄せられた膨大な“感覚情報”及び、“現地の実況情報”を解析することで、予測不可能と言われる“ゲリラ雷雨”を事前に捕捉することが可能となりました。

“ゲリラ雷雨”の捕捉率

“ゲリラ雷雨”をもたらす雷雲は、予め予測可能な前線による雨とは別で、“急速”かつ“局地的 ”に発達し、事前に予測できないのが特徴です。ウェザーニューズでは、『10分天気予報』において“ザーザー”以上の強い雷雨(5段階中の2番目に強い雨)が報告された中で、当時、前線の影響による雷雨(事前予測ができていた雨雲)を除き、当日の朝の時点で予測できていなかった雷雨を“ゲリラ雷雨”としてカウントしています。今回、ウェザーニューズでは、全国4都市で、7月30日から9月15日の期間において朝9時から夜21時までの12時間の間に、各地で“ゲリラ雷雨”が何回発生したかを算出しました。また、それら発生した“ゲリラ雷雨”を、どのくらいの確率でウェザーニューズが事前に捕捉していたかを計算するとともに、その捕捉した“ゲリラ雷雨”を何分前にメールで登録会員に知らせていたかを今回算出しました(200分以上前のメール送信は無効としてカウント)。


各地の“ゲリラ雷雨”発生数は、福岡県で308回、東京都・愛知県で172回、大阪府で 128回発生しています。4都市の中で、ゲリラ雷雨防衛隊の人数が特に多い、東京都では、172回の発生のうち、76.7%にあたる132回を捕捉することに成功しており、“ゲリラ雷雨”が雨を降らせ始めるどの位前に“ゲリラ雷雨メール”を発信していたかに関しては、38分前に知らせています。これは、そのエリアでの参加人数が増えれば増えるほど、“ゲリラ雷雨”の捕捉率は上がり、より精度の高い予測を行うことが可能となることが実証されました。エリア(10kmメッシュ)内にゲリラ雷雨防衛隊の参加人数が150人以上いる場合、“ゲリラ雷雨”の事前捕捉率は平均で90.9%、“ゲリラ雷雨メール”の事前平均時間は62分前という結果もでています。


各都府県 ゲリラ雷雨
発生数
ゲリラ雷雨
捕捉率
ゲリラ雷雨メール
事前送信時間
東京都 172回 76.7% 平均38分前
大阪府 128回 62.5% 平均8分前
愛知県 172回 63.9% 平均19分前
福岡県 308回 71.7% 平均29分前

ゲリラ雷雨メールサービス利用調査(アンケート結果)

ウェザーニューズでは、“ゲリラ雷雨”対策サービス『ゲリラ雷雨メール』に関し、“ゲリラ雷雨防衛隊員”1万人と“ゲリラ雷雨メール登録者”4万人の計5万人を対象にアンケート調査を、9月24日〜25日の2日間(19124件回答)実施しました。


サービスを利用した感想に関する質問では、「『ゲリラ雷雨メール』は役立ちましたか?」との問いに対し、49%の人が“かなり役立った”、43%の人が“まぁまぁ役立った”との回答があり、全体の92%の方から『ゲリラ雷雨メール』のサービスが役に立ったとの評価を頂きました。また、「『ゲリラ雷雨メール』を来年も利用したいですか?」との問いには、全体の94%の人が“利用したい”との回答し、サービスの満足度が高いことが分かりました。一方、“ゲリラ雷雨防衛隊員”限定の質問では、「“ゲリラ雷雨防衛隊員”に参加した理由は?(複数回答可)」との問いには、“誰かの役に立ちたいから”が58%と高い回答率をマークし、「“ゲリラ雷雨防衛隊員”に参加した防衛隊として活動した感想は?」との問いには、“楽しかった”との回答が68%を占めました。これは、 “ゲリラ雷雨防衛隊員”の皆さんが、多数の被害を出した“ゲリラ雷雨”に対し、問題意識を持ちそれを解決するための取り組みとして“ゲリラ雷雨防衛隊員” に参加していたことが伺えると共に、それらの取り組みを楽しみながら参加している姿勢がアンケート結果から明らかになりました。


Q1. 役に立ちましたか?

Q3. 参加動機は?(複数選択)
[ゲリラ雷雨防衛隊員のみが回答]

  • かなり役立った(49%)
  • まぁまぁ役立った(43%)
  • どちらでもない(1%)
  • あまり役立たなかった(6.2%)
  • 役立たなかった(1%)

  • 誰かの役に立ちたいから (58%)
  • ゲリラ雷雨で大変な目にあったから(44%)
  • ゲリラ雷雨を予想したいから (44.6%)
  • 雲を見るのが好きだから (38%)
  • 何となく楽しそうだったから(32%)
  • その他 (9%)

Q2.来年も利用したいですか?

Q4. 参加した感想は?(複数選択)
[ゲリラ雷雨防衛隊員のみが回答]

  • 利用したい(94%)
  • 利用したくない(0.38%)
  • わからない(5.1%)

  • 楽しかった(68.6%)
  • 達成感があった(36.5%)
  • 連帯感があった(54.7%)
  • つまらなかった(3.3%)

ウェザーニューズでは、“ゲリラ雷雨”に関する解析を引き続き実施し、来年度以降の対策を進めていきます。また、“ゲリラ雷雨メール”サービスの前身である『10分天気予報』の情報精度向上を図り、“秋の台風”、“冬の雪”など被害を少しでも減らす取り組みを行っていきます。今後も、より便利な生活をサポートする気象サービスを提供するため、従来の気象情報の枠組みを超えた、“新しい気象情報”を利用者と共に実施していく予定です。

株式会社ウェザーニューズ(東証1部 <4825>)について

世界主要国 / 地域に32の営業拠点を持つ、世界最大の民間気象情報会社。
海、空、陸のあらゆる気象現象の世界最大規模のデータベースを有し、独自の予報により、航空、海運、流通、自治体などの各業務の問題解決情報を提供している。
一般個人に対しては、携帯電話、インターネット、BSデジタル放送等のメディアを通じて、個人の生活を支援する各種情報を提供。