発行日 : 2009年09月07日
事前捕捉率90%以上、犠牲者ゼロを目指した
~ 東京都における“ゲリラ雷雨”事前捕捉率は94%、事前メール送信時間は43分前 ~
株式会社ウェザーニューズ(所在地:東京都港区、代表取締役社長:草開千仁)は、9月7日(月)に、突発的かつ局地的に雷雨をもたらす“ゲリラ雷雨”による被害を軽減するために発足した「ゲリラ雷雨防衛隊」の8月の取り組み結果を発表いたしました。当社では“ゲリラ雷雨”を事前予測する試みとして、全国で 2万3千名を超える「ゲリラ雷雨防衛隊」と、ゲリラ雷雨を捕捉するために開発された高頻度の小型観測レーダー「WITHレーダー」を導入し、“ゲリラ雷雨”の監視体制強化に努めています。その結果、8月1日から8月31日の期間において、東京都では“ゲリラ雷雨”事前捕捉率が94.2%に達し、全国では、平均83.5%の確率で事前に捕捉することに成功しました。また、12万以上の方が携帯電話に登録をしている「ゲリラ雷雨メール」においては、東京都では平均42.7分前に事前送信し、全国では平均58.7分前に事前送信しています。当社では、引き続き、「ゲリラ雷雨防衛隊」と共に“ゲリラ雷雨”の事前捕捉率を上げていくことを試み、また“ゲリラ雷雨”による“犠牲者ゼロ”を目指し、“ゲリラ雷雨”の監視及び、その被害状況を収集し、今後の被害軽減に役立てていきます。
エリア | ゲリラ雷雨 発生回数 | 事前捕捉率 | 事前メール送信時間 | ゲリラ雷雨防衛隊の人数 |
---|---|---|---|---|
東京都 | 86回 | 94.2% | 42.7分 | 4329人 |
大阪府 | 97回 | 90.7% | 49.7分 | 1343人 |
愛知県 | 108回 | 94.4% | 76.3分 | 1173人 |
福岡県 | 86回 | 90.7% | 56.6分 | 586人 |
全国(上記以外) | 6563回 | 83.0% | 58.8分 | 14913人 |
全国(上記含む) | 6940回 | 83.5% | 58.7分 | 22344人 |
ゲリラ雷雨の事前捕捉率の求め方
“ゲリラ雷雨”をもたらす雷雲は、予め予測可能な前線による雨とは別で、“急速”かつ“局地的 ”に発達し、事前に予測できないのが特徴です。また限られた数しか設置されていないアメダスでは、全ての雨を正確に観測できないのが現状です。ウェザーニューズでは、『10分天気予報』において“ザーザー”以上の強い雷雨(5段階中の2番目に強い雨以上)が報告された中で、当時、前線の影響による雷雨(事前予測ができていた雨雲)を除き、当日の朝の時点で予測できていなかった雷雨を“ゲリラ雷雨”としてカウントしています。上記は、全国と4都市で、8月1日〜8月31日の期間において、各地で“ゲリラ雷雨”が何回発生したかを算出しました。また、それら発生した“ゲリラ雷雨”を、どのくらいの確率で事前捕捉していたかを計算するとともに、その捕捉した“ゲリラ雷雨”を何分前にメールで登録会員に知らせていたかを算出しました(200分以上前のメール送信は無効としてカウント)。8月は昨年と同じく、太平洋高気圧の張り出しが弱く、気温は低め、日照時間は少なめとなりました。台風9号やシアライン(居残り梅雨前線)の影響との合わせ技で、雷雨や大雨となった期間がありましたが、上空の寒気は昨年ほどの流れ込みは無く“ゲリラ雷雨”の頻度も昨年より低く推移しました。今後の傾向は、太平洋高気圧の張り出しは引き続き、平年より弱い状態が続きます。また、天気は周期変化となるため、上空に寒気が入ることもあり、今後1ヶ月の気温傾向は、関東甲信・北陸では平年よりやや低く、北日本では平年より低くなります。一方、沖縄・奄美・九州南部では平年より高く、九州北部、四国、中国、近畿、東海では平年並みになります。気温傾向が平年並みや平年より高い地域ほど、“ゲリラ雷雨”発生の油断はできません。
〜事例1:沖縄那覇市で発生した“ゲリラ雷雨”(8月19日)〜
8月19日、日本の南海上には低気圧があり、ゆっくりと西進していました。沖縄周辺では、暖湿気が流れ込み、上空には寒気も流れ、大気の状態が不安定な日でした。この日、13時30分頃、沖縄県で“ゲリラ雷雨”が発生し、安次嶺では13時〜14時で58.5mmの雨が降りました。そして、各地で甚大な冠水被害が発生すると共に、川で作業していた方が流されるという被害が発生しました。沖縄県の「ゲリラ雷雨防衛隊」からは続々とリポートが届き、予報センターでは、その危険性を事前に解析し、11時57分、13時05分には那覇市周辺の「ゲリラ雷雨メール」登録者にメールを送信しました。
10時08分頃〜:沖縄県の「ゲリラ雷雨防衛隊」からのリポートを受信
11時57分頃:那覇市周辺の「ゲリラ雷雨メール」登録者に一回目のメールを送信
13時05分頃:那覇市周辺の「ゲリラ雷雨メール」登録者に二回目のメールを送信
13時30分頃:那覇市付近で“ゲリラ雷雨”発生
18時57分頃:ガーブ川泥水のリポートを受信
〜事例2:千葉県、埼玉県で発生した“ゲリラ雷雨”(8月9日)〜
この日、南海上には熱帯低気圧(同日21時に台風9号となる)があり、関東でも下層暖湿流の影響を受けました。さらに、本州上空には寒気が流入し、関東南部では地上南東風による局地的な収束がありました。昼過ぎには関東南部でも“ゲリラ雷雨”が発生し、千葉では15時〜16時で42.0mm、越谷では16時〜19時で56.5mmの雨が降りました。そして、千葉県と埼玉県であわせて、冠水12件、停電4件、通行止め2件の被害が発生しました。
<千葉県>
午前中:千葉県の「ゲリラ雷雨防衛隊」から「入道雲発達中」のリポートを受信
昼前後:千葉県の「ゲリラ雷雨防衛隊」から「グレー雲、黒い雲」のリポートを受信(計220通)
13時30分頃:千葉市周辺の「ゲリラ雷雨メール」登録者にメールを送信
13時40分頃:千葉市付近で“ゲリラ雷雨”発生
15時29分頃:千葉市周辺で冠水などの被害リポートを受信
<埼玉県>
午前中〜:埼玉県の「ゲリラ雷雨防衛隊」から「怪しい雲」のリポートを受信
昼前後:埼玉県の「ゲリラ雷雨防衛隊」から「蒸し暑い」のリポートを受信(計40通)
15時22分頃:川口市周辺の「ゲリラ雷雨メール」登録者にメールを送信
15時31分頃:川口市付近で“ゲリラ雷雨”発生
16時06分頃:川口市周辺から道路冠水などの被害リポート受信
〜事例3:東京で発生した“ゲリラ雷雨”(8月24日)〜
この日、オホーツク海には上層寒冷渦に対応した低気圧が居座り、大陸からは高気圧が東へと張り出しました。そして、昼過ぎにかけて寒気トラフが日本付近を通過しました。また関東付近には下層に湿った空気があり、地上風による収束もあって、東京で“ゲリラ雷雨”が発生しました。
12時30分頃:東京で続々と「怪しい雲」のリポートを受信(計2300通)
13時00分以降:東京に「ゲリラ雷雨メール」登録者に随時メールを送信
14時13分頃:調布のWITHレーダーが町田周辺の雷雨の前兆を検知
14時50分頃:気象庁レーダーにて町田周辺の雷雨を検知
15時20分頃:“ゲリラ雷雨”発生のリポート受信
〜事例4:「竜巻アラーム」を配信(8月7日)〜
この日、台湾には台風8号があり、日本では前線が本州付近に停滞していました。台風8号の影響もあり、南からは暖湿流が流れ込み、大気の状態が不安定な状態が続き、竜巻が発生してもおかしくない状況で、「ゲリラ雷雨防衛隊」と監視体制を強化していました。
18時43分:埼玉県のゲリラ雷雨防衛隊から竜巻の一種「ろうと雲」のリポートを受信。直後に、埼玉、東京、千葉、神奈川、茨城の「竜巻アラーム」登録者に送信
ゲリラ雷雨をもたらす雷雲は、“急速”かつ“局地的 ”に発達します。まず、“急速”に発達するため、従来の気象レーダーやアメダスの5分単位観測では、急速な雲の発達をとらえることができません。例えば、従来の気象レーダーは、雨雲が2km以上になって初めてエコーとして、確認することができますが、この時点ではすでに雲が発生してから、5分以上経っている可能性があります。また、2km以上に達した雨雲はすでに雨を降らせている可能性が高く、その数分後には激しい雷雨をもたらします。つまり、気象レーダーで雨雲をとらえてからでは、手遅れになることが多くあります。そして、雨雲の大きさが数km?十数kmと "局地的"に発達するため、スケールの小さい気象現象を苦手とする従来の気象予測モデルでは捉えることができません。さらに雷雨となっても局地的なため、アメダスでは捉えられない場合があり、“ゲリラ雷雨”は予測不可能といわれています。
『ゲリラ雷雨防衛隊』は予測不可能と言われた“ゲリラ雷雨”を事前に捕捉することを目的にウェザーニュース携帯サイト内で発足したコミュニティで、ウェザーニュース携帯サイトの月額315円会員の方ならば誰でも参加することができます。『ゲリラ雷雨防衛隊』へ入隊した方は“隊員”と呼ばれ、事前に登録をした地点を重点的に“感測”する役割を担います。“感測”はウェザーニュースから「監視体制始動メール」が届いたタイミングで実施し、届いたメールのリンク先のサイトで、“現在の天気”“雲のある方角”“雲の成長具合”“雷鳴の有無”、そして、“肌で感じた感覚”などを入力し、写真などと併せて送信します。昨年は1万人以上の方が参加し、全国の隊員の“目”で感測した“現地の実況情報”及び“感覚情報”を解析することで、観測機では捉えられない、急速に発達する“ゲリラ雷雨”発生の前兆を捉えることに成功しました。今年はより正確に、より事前に雷雲を把握するため、隊員の報告項目をバージョンアップすると共に、昼モード、夜モードなどのそれぞれの時間に合った報告で、“ゲリラ雷雨”の捕捉に取り組んでいます。
世界主要国 / 地域に32の営業拠点を持つ、世界最大の民間気象情報会社。
海、空、陸のあらゆる気象現象の世界最大規模のデータベースを有し、独自の予報により、航空、海運、流通、自治体などの各業務の問題解決情報を提供している。
一般個人に対しては、携帯電話、インターネット、BSデジタル放送等のメディアを通じて、個人の生活を支援する各種情報を提供。