2009.08.18
今週もじわじわと融解が進みましたがまだ両航路とも開通には至っていません。北東航路側では東シベリア海の海氷もかなり減少し、残るはタイミル半島付近の海氷のみです(図1)。ただタイミル半島付近の海氷は先週と比べ顕著な変化がありませんでした。
北東航路は2005年に初めて1ヶ月以上という長期に渡り開通し、その後は2008年に再び2週間ほど開通しています。果たして今年が3回目の開通となるかどうか注目されるところです。
北西航路側はカナダ多島海付近で定着氷が更に減ってきましたが、まだ密接度10の海氷が残っています。北西航路は2007年に初めて開通し、昨年2008年の今日8月18日に2度目の開通、そして1ヶ月以上に渡って開通状態が続きました。こちらも今年が3回目の開通となるかどうか注目されます。
過去5年間の記録によると、北東航路の開通した最早日は2005年の8月10日、北西航路が2008年の8月18日ですので、今年は今から開通しても最早の記録更新にはなりません。
(注:ここでの「開通」とは「10日間以上連続して航路がつながっていた状態」としました。2007年の北東航路、2006年の北西航路で短期間の開通があったかもしれませんが、2007年の北東航路は短期間、2006年の北西航路はビューフォート海付近において海氷が沿岸部に押し寄せたり引いたりしていた状態と判断し、開通としていません。)
海氷面積の減少速度は先週同様ややゆっくりで足踏み状態です。現在の北半球全体の海氷面積は昨年や2006年より若干多めで、観測史上3番目から4番目の少なさです。北西航路側、北東航路側それぞれで見ると観測史上3番目の少なさでした。
NW Passage |
Gulf of St.Lawrence |
Grand Banks |
Labrador Sea |
Davis Strait |
Baffin Bay |
Canadian Arctic E |
Canadian Arctic W |
Beaufort region |
Chukchi | Bering West |
IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | |
Greenland Sea SW |
Foxe Basin |
||||||||
IF |
NE Passage |
Bering West |
Chukchi | East Siberian |
Laptev | Kara Sea N |
Barents Sea NE |
Barents Sea S |
Barents Sea NW |
IF | IF | IF | IF | IF | |||
Kara Sea S |
|||||||
IF |
海氷密接度 | 航路状況 | |
7以上 | 砕氷船無しでは航行不能 | |
4以上6以下 | 一定ランク以上の耐氷船が航行可能 | |
3以下 | 耐氷船が航行可能 | |
IF | 海氷無し(Ice Free) | 通常船舶が航行可能 |
表2. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.
両航路ともまだ開通には至っておらず航路状況としては先週と同じ状態です。今週の変化を衛星画像などから判断すると、北東航路側では東シベリア海ノボシビルスク諸島付近で融解が進み、アイスフリーでの航行が可能になったと思われます。タイミル半島付近のカラ海、ラプテフ海、はまだ砕氷船無しでは航行できない状況です。
北西航路側ではフォックス湾の海氷が減少し密接度4-6以下になりました。フォックス湾内は耐氷船であれば航行可能な状況ですが、その先のカナダ多島海(カナダ北極圏)の西部にまだ密接度10の海氷があって航路はつながっていません。(尚、つながった場合もフォックス湾回りの航路は幅がせまく水深が浅いところを通る必要がある為、大型の船舶の航行は出来ません。)
ウェザーニューズの独自の海氷予測モデルI-SEEによると、北極海の海氷は今後も減少を続けるものと予測されます。しかし、タイミル半島付近とカナダ多島海付近の氷が融解しきらない予想で、期間中の9月頭までに両港路までは至らない予想です。
図4. モデルによる北極海の海氷予測.