2009.09.08
図1. 北西航路側のMODISのイメージ。プリンスオブウェールズ島とサマセット島の間に航路開通の可能性がある(クリックで拡大)
図2. 北東航路側のMODISのイメージ。チェリンスキ岬とボリシェビク島の間に航路開通の可能性がある.(クリックで拡大)
海氷の融解速度はかなり緩やかになってきましたが、依然融解を続けています。北西航路側では、プリンスオブウェールズ島の南側の氷密接度が小さくなり密接度1-2の海氷域でつながっていますが、1以下までにはなっていません。北東航路側でもカラ海はほぼアイスフリーの状態となり、ラプテフ海に海氷が残るものの、密接度7-8の領域が幅数10kmの帯状に広がっているほかは密接度1-3以下となっています。この様に両航路とも、開通の定義である「氷密接度1以下で航路がつながる」には達していませんが、一部の領域を除き航行可能な状況です。海氷面積は例年9月に最小となりますが、最小値を記録するのは年によって上旬であったり下旬であったりします。両航路付近では気温や海面水温が0度前後になってきており、プリンスオブウェールズ島の北東にあるコーンウォリス島のレゾリュードでは昨日雪を観測しました。今年はそろそろ海氷面積が底をうつ季節かもしれません。グローバルアイスセンターでは残り少ない融解の季節を引き続きモニターしていきます。
海氷面積の融解速度はかなり緩やかとなりましたが、北極域全体の海氷面積は昨年、一昨年に引き続き観測史上3番目の少なさを維持しています。北西航路側で見ても3番目の少なさ、北東航路側は3番目から4番目の少なさとなります。
NW Passage |
Gulf of St.Lawrence |
Grand Banks |
Labrador Sea |
Davis Strait |
Baffin Bay |
Canadian Arctic E |
Canadian Arctic W |
Beaufort region |
Chukchi | Bering West |
IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | |
Greenland Sea SW |
Foxe Basin |
||||||||
IF |
NE Passage |
Bering West |
Chukchi | East Siberian |
Laptev | Kara Sea N |
Barents Sea NE |
Barents Sea S |
Barents Sea NW |
IF | IF | IF | IF | IF | IF | IF | |
Kara Sea S |
|||||||
IF |
海氷密接度 | 航路状況 | |
7以上 | 砕氷船無しでは航行不能 | |
4以上6以下 | 一定ランク以上の耐氷船が航行可能 | |
3以下 | 耐氷船が航行可能 | |
IF | 海氷無し(Ice Free) | 通常船舶が航行可能 |
表. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.
北西航路側ではプリンスオブウェールズ島の南側で氷密接度が減少し、密接度1-2で航路がつながり航路状況は黄色にランクダウンしました。ただし、まだ密接度7以上の海氷域があり、風向きによっては航路を塞ぐ可能性もあります。北東航路側ではカラ海北部はほぼアイスフリーとなり、航路状況は緑にランクダウン、ラプテフ海のチェリスキン岬とボリシェビク島の間に、氷密接度7-8の領域が幅数10kmで延びているほかは密接度1-3以下でつながります。この領域を除き航行可能な状況ですが、ラプテフ海の航路状況としては赤で変化なし、従って北東航路全体の航路状況も赤のままです。
I-SEEモデルの予測では、東シベリア海の低気圧の影響等で一時的にタイミル半島に向かう海氷の流れがあるものの、期間全体を通じてはグリーンランドに向かう移流が優勢です。海氷面積は今月中にわずかながら増加に転じる見込みです。
尚、この図では航路が開いている様に見えますが、これはこのモデルの初期値に用いている衛星データ(AMSR-E)の氷縁の処理の問題で、実際には開通していません。
図5. モデルによる北極海の海氷予測.