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Weekly Report

2009.09.15

GIC Weekly Report for the Arctic Region Vol.7
海氷面積最小値を記録、凍結始まる

Topic of the Week

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図1. AMSR-Eによる2009年海氷の最大面積(赤色)と最小面積(白色).(クリックで拡大)


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図2. 1978年から2009年の間の海氷の最大面積と最小面積.(クリックで拡大)

先週から今週にかけてもわずかに海氷面積が減少しましたが、そろそろ横ばいになりこの夏の底を打った様子です。北西航路側のプリンスオブウェールズ島の南では氷密接度1-3の海氷域でつながっていますが、島の北側でバロー岬からプリンスオブウェールズ島の東側に入る部分は、海氷でブロックされてしまいました。このブロックは氷結によるものではなく、移流によるものですが付近の気温は既に氷点下で雪も頻繁に観測されており、海面水温も氷点下1度から2度です。今後は氷結も予想されることから、航路の完全開通は非常に可能性が低くなっています。北東航路側は、先週とほぼ同じ状況でタイミル半島付近に残る海氷が航路開通を阻んでいる様です。こちらも北西航路同様に今後氷点下の気温が予測されており、海面水温も零度前後、徐々に氷結のステージへと切り替わっていきそうです。
今年の北半球の極域全体の海氷面積の最大値は3月9日の14.8x106km2(図1の赤色で表示)、まだ多少の変動があるものの最小値は9月9日の4.76x106km2(図1の白色で表示)になりそうです。
図2は過去30年間の海氷面積の最大値と最小値をグラフにしたものです。このグラフから最大面積はここ30年であまり大きく変化していないものの、最小面積は明らかに減少していることが分かります。多年氷が減って冬から春にかけて氷結は起こるものの薄くて溶けやすい氷になっていると言えます。

Sea Ice Extent

Sea Ice Extent in the Arctic

 Arctic
 Western Arctic
 Eastern Arctic

図3. 北極海の海氷面積.(クリックで拡大)

Ice Image

図4. 北極海の海氷の衛星画像.(クリックで拡大)

北極域全体の海氷面積は昨年、一昨年に引き続き観測史上3番目の少なさを維持しています。北西航路側、北東航路側それぞれで見ても3番目の少なさとなります。現在の海氷面積は4.83x106km2、多少振動しながらも今後徐々に増えていくのではないかと思われます。北半球の極域全体と北西航路側の海氷面積は既に横ばいとなっており、来週には明らかに増加しているでしょう。北東航路側に関しては、北西航路側に比べると最小値となる時期のばらつきが大きく、もう少し減少を続ける可能性もありそうです。

Sea Ice Conditions along Polar Routes


NW Passage  
Gulf of
St.Lawrence
Grand
Banks
Labrador
Sea
Davis
Strait
Baffin
Bay
Canadian
Arctic E
Canadian
Arctic W
Beaufort
region
Chukchi Bering
West
IF IF IF IF IF IF   IF IF IF
    Greenland
Sea SW
  Foxe
Basin
         
    IF              
NE Passage  
Bering
West
Chukchi East
Siberian
Laptev Kara
Sea N
Barents
Sea NE
Barents
Sea S
Barents
Sea NW
IF IF IF   IF IF IF IF
          Kara
Sea S
   
          IF    
Ice Concentration Passage situation
  equal or
more than
7
ships can not sail without icebreaker
  4-6 ice-strengthend ships can sail
  less than 3 ice-worthy ships can sail
IF Ice Free normal ships can sail

表. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.

北西航路側ではプリンスオブウェールズ島の南側では先週に引き続き、密接度1-3で航路がつながっていますが、上述の様に島の北側、バロー岬からプリンスオブウェールズ島の東側の海峡に入るところが氷密接度4-6の海氷の移流によりブロックされてしまいました。従って航路状況としてはオレンジにランクアップしました。バロー岬に面したコーンウォリス島のレゾリュードは昨日も今日も雪、気温は零度から氷点下数度ですっかり冬です。今後は凍結による密接度増加も起こってきそうです。フォックス湾を経由する航路でも、フォックス湾からブーシア湾に抜ける海峡内に氷密接度4-6の海氷があり、航路状況はオレンジとなりました。北東航路側では、航路状況は先週と変わらず赤、ラプテフ海のチェリスキン岬とボリシェビク島の間に、海氷が残っています。この付近の海面水温は零度前後で北西航路側のプリンスオブウェールズ島付近に比べるとやや高めですので、氷結開始はもう少し後かもしれませんがいずれにせよ今後大きく融解することはなさそうです。両航路ともこの夏の完全開通の可能性は非常に低いでしょう。

Model Prediction

北東航路側のタイミル半島付近では、極域からの寒気が流れ込み次週は0度からマイナス5度前後の気温が予測されています。海面水温は0度前後の見込みで短期間わずかな融解が起きる可能性は残っています。北西航路側のカナダ多島海付近では北寄りの風が極域の寒気を運び、次週は気温マイナス5度からマイナス10度となる予想です。海面水温もマイナス1度からマイナス2度前後で氷結のシーズンの到来です。
I-SEEモデルの予測によると、期間前半にはタイミル半島付近に向かう海氷の移流がありますが、期間の後半はトランスポーラードリフトやビューフォートガイアの影響でグリーンランド側に向かう移流が優勢となります。ビューフォート海の沿岸に向かう海氷の移流も予測されていますが、これには氷結も伴う予想です。期間の半ばにはプリンスオブウェールズ島の西部付近で海氷の生成が予測されており、モデルにもカナダ多島海での融解のシーズンが終了し凍結シーズンに入ることがはっきりと現れて来ました。
注).尚、この図では航路が開いている様に見えますが、これはこのモデルの初期値に用いている衛星データ(AMSR-E)の氷縁の処理の問題で、実際には開通していません。

Model Prediction Image

図5. モデルによる北極海の海氷予測.

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