2009.09.30
今夏の北極海の気温は全体的に高く、海氷域面積も過去の平均より少ない水準にありました。両航路上の気温は、北東航路側では過去数年の平均よりやや低め、北西航路側では逆に高めの状況でした。これは、現在発生しているエルニーニョの年に統計的に見られる傾向と一致しています。しかし、今年の北極海の気圧配置は、海氷が観測史上最小を記録した2007年のように、海氷を北極海から大西洋に押し出す風を作るような配置にはなりませんでした。このことが、海氷面積が少ないにも関わらず航路開通に至らなかった原因のひとつと考えられます。
・北東航路側(ロシア側)
8月上旬にはすでに航路の大部分が開き、昨年同時期よりは海氷が少ない状態でした。8月下旬までに北東航路上の海氷はビルキツキー海峡付近を除いてほぼ融解し、航路開通の可能性が高まりました。しかし、ビルキツキー海峡付近には北から海氷と冷たい海水が流れ込むような気圧配置が続いたため、その後航路上の海氷が無くなることはありませんでした。完全開通とはならなかったものの、9月は数10km程度の難所を抜ければ通行が可能な状況が続いています。実際、9月上旬にはドイツの海運会社が、航路上の一部でロシアの砕氷船の先導を受けて、北極海北東航路を利用した商業航海を実施しています。
・北西航路側(カナダ側)
昨冬にカナダ多島海に張った定着氷が予想以上に成長していたため、近年に比べてその融解時期が遅れていました。しかし9月には、いくつかルートがある北西航路のうちで多島海の南部を通るルートが、ラーセン海峡の氷を残して開いた状態となりました。しかし、残る海氷はなかなか後退せず、9月下旬には開いたものの、ほぼ同時期に同ルート上で北部に位置する別箇所(バロー海峡)が氷で閉ざされてしまったため、航路開通とはなりませんでした。
今夏の北極海の気温は全体的に高く、海氷域面積も過去の平均より少ない水準にありました。両航路上の気温は、北東航路側では過去数年の平均よりやや低め、北西航路側では逆に高めの状況でした。これは、現在発生しているエルニーニョの年に統計的に見られる傾向と一致しています。しかし、今年の北極海の気圧配置は、海氷が観測史上最小を記録した2007年のように、海氷を北極海から大西洋に押し出す風を作るような配置にはなりませんでした。このことが、海氷面積が少ないにも関わらず航路開通に至らなかった原因のひとつと考えられます。
ウェザーニューズグローバルアイスセンターでは、北極海の海氷と北極海航路の状況を監視し、週間レポートとしてまとめたものを本ウェブサイト上で公開してきました。今夏の北極海についてはこれで終了となりますが、冬にはサハリン2からの天然ガス輸送などで注目されるオホーツク海をはじめ、世界の海氷域についての情報発信を行っていきます。