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Weekly Report

2010.08.12

GIC Weekly Report Vol.2
西半球側での融解が進み、北西航路は開通に近い状況

今週のトピック

先週に引き続き北極海の海氷は縮小していますが、西半球側(カナダ側)と東半球側(シベリア側)で融解の速度に差が出ています。西半球側では、一日あたり32,000km2の速度で縮小を続けているのに対して、東半球側では減少速度が緩やかです。 この傾向は、先週のレポートにおける見解と一致しています。つまり、8月初旬現在、西半球側の海氷は例年に比べて比較的薄く、融けやすい状況にある一方、東半球側の海氷は比較的厚い海氷が残っているために、融けにくい状況にある、と考えられます。 Figure 1は8月1日から10日の海氷密接度の変化を示しています。青は海氷が減っている箇所、赤は海氷が増えている箇所です。これによると、カナダ多島海の海氷が現在速いペースで融解しており、北極海北西航路の開通が近い状態になっています。この先も融解が続くものと予想され、早ければ今月中にも航路が開通する可能性があります。

Model Prediction Image

Figure 1. 海氷密接度の変化(8月1日〜10日)

海氷域の分布状況

Sea Ice Extent in the Arctic

 Arctic
 Western Arctic
 Eastern Arctic

Figure 2a-2c. 北極海の海氷面積.(クリックで拡大)

Ice Image

Figure 3. 北極海の海氷衛星画像.(クリックで拡大)

現在、北極海全体の海氷域面積はおよそ570万km2で、観測史上2番目に少ない水準で減少を続けています(Figure 2a)。また、北極海東半球側 の面積は310万km2、西半球側の面積は260万km2です。減少速度について見ると、北極海全体の減少速度は一日あたり43,000km2ほどですが、そのうちの7割以上が西半球側での減少(一日あたり32,000km2)によるものです。東半球側ではが緩やかになっており(11,000km2)、 東西での減少傾向は対照的です。Figure 3は現在の海氷分布を示しています。西半球側、カナダ多島海中の海氷が無くなってきているのに対して、東半球側、東シベリア海やラプテフ海の広い範囲にまだ海氷が張り出しているのがわかります。

北極海航路上の海氷状況


Sea Ice Conditions Image

Figure 4. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.

Figure 4は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。現在、北西航路側の融解が顕著に見られ、一昨年以来となる開通の可能性が高まっています。ビューフォート海からカナダ多島海のViscount Melville海峡に入る最も広いルートは海氷で閉ざされていますが、Prince of Wales海峡の海氷が融けており、この狭い海峡を取ってカナダ多島海に入ることができます。カナダ多島海中央は海氷が残っている海域があり、まだ開通に は至りませんが、既に開通が近い状況です。 一方、北東航路について見てみると、チュクチ海や東シベリア海の海氷は徐々に後退していますが、ラプテフ海とカラ海を繋ぐVilkitsky海峡付近の海氷は依然として残っているため、開通状況に大きな変化はありません。

モデルによる今後の予測

Figure 5はウェザーニューズで独自開発した海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。今後も北極海の海氷は減少を続けることが予測されていま す。14日頃まではビューフォート海の海氷は時計回りに循環し、カナダの島々から海氷が離れていきそうです。また、カナダ多島海中の海氷も融解に向かい、 北西航路は今月中にも開通に至る可能性があります。北東航路側は、Vilkitsky海峡に海氷が残る予測となっており、現在のところ開通の見通しは立っていません。

Model Prediction Image

Figure 5. モデルによる北極海の海氷予測.

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