2010.08.19
先週と同様に、今週も西半球側(カナダ側)での融解が進んでいます。特に今週はカナダ多島海の北部や、南部のLarsen湾などでの海氷の減少が顕著に見られます。
この数日間、カナダ多島海西部は高気圧で覆われているため雲がほとんど無く、人工衛星の可視画像でも海氷の分布状況が良くわかります。Figure1はNASAの地球観測衛星TerraのMODISセンサーによる画像です。これを見ると、北西航路上にはまだ海氷が残る部分(図中の赤線)があり、開通には至っていませんが、全体的な海氷の量は例年に比べてかなり少なくなっています。
今後も数日間、カナダ多島海上は高気圧で覆われる予想です。それによって海氷の融解は進みやすい状況となり、北西航路が開通する可能性が高くなっています。
Figure 1. NASAの地球観測衛星TerraのMODISセンサーによる画像
Figure 2aは北極海の海氷域面積の推移を示しています。現在、北極海全体の海氷域面積はおよそ520万km2となっています。これは、観測史上最小となった 2007年(同時期で470万km2)に次ぎ、2番目に少ない面積です。海氷域は現在も縮小傾向にあり、最近の一週間で50万km2ほど減少しています。 西半球側の面積(Figure 2b)と東半球側の面積(Figure 2c)をそれぞれ見ると、西半球側での減少が目立っています。
Figure 3は現在の海氷分布を示しています。西半球側、カナダ多島中の海氷が無くなってきているのに対して、東半球側、東シベリア海やラプテフ海の広い範囲にまだ海氷が張り出しているのがわかります。
Figure 4. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.
Figure 4は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。両航路ともまだ開通には至っておらず全体の航路状況は先週から変わっていません。
今週の変化を衛星画像などから判断すると、北西航路において多島海での融解が進んでいます。Larsen湾(場所についてはFigure 1を参照)では氷が西に流れて偏ったことにより、 海氷密接度が1/10から3/10程度まで減少しました。Viscount Melville海峡やBarrow海峡、そしてVictoria島−King William島間などでまばらに海氷が分布しているため、全面的な開通には至りませんが、いずれ開通する見込みが高い状況です。一方、北東航路において は、東シベリア海や ラプテフ海の広い範囲にまだ海氷が張り出しているために、依然として砕氷船なしでは航行できない状況が続いています。
Figure 5はウェザーニューズで独自開発した海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。今後も北極海の海氷は減少を続けることが予測されていま す。特に、カナダ多島海上に広がっている高気圧の影響で、今後しばらくは北西航路上から海氷が離れる方向に流されていくものと予想されます。一方、北東航 路側では、ラプテフ海西部に広がる海氷が後退しにくい状況が続くため、現在のところ開通の見通しは立っていません。
Figure 5. モデルによる北極海の海氷予測.