2010.09.24
先々週に開通した北西航路は、現在も開通した状態が続いています。それに加えて、今週は北東航路が開通していることが、衛星画像から確認できました。Figure 1は今回開通した北東航路を現在の海氷分布と共に示しています。北東航路では、航路の中間にあるVilkitskly海峡およびその周辺に海氷が残っており、ここを通過するには砕氷船のサポートが必要な状況でしたが、9月に周辺の海氷密接度が大きく減少し、開通の可能性が高まっていました。今年のように東西両北極海航路が同年同時期に開通するのは2008年以来で、観測史上2度目の出来事になります。
現在は、北極海の海氷域が一年で最も小さくなる時期にあたります。今後は、高緯度域から結氷が進み、海氷域は冬に向けて急速に拡大していきます。北極海航路も今月中か、遅くても来月前半には再び海氷で閉ざされていく見通しです。
Figure 1.
Figure 2aは北極海の海氷域面積の推移を示しています。現在の面積は先週からほぼ変わらず、およそ450万km2です。これは、2007年(400万km2)、2008年(440万km2)に続き観測史上3番目に少ない面積です。西半球側の面積は先週からわずかに増加し250万km2となっていますが、この時期としては2番目に少ない面積です(Figure 2b)。また、東半球側の面積は200万km2となっています(Figure 2c)。
Figure 3は現在の北極海の海氷分布を示しています。先週に引き続き、カナダ多島海(図の右側)では海氷が若干増加しています。シベリア沿岸域(図の左側)では依然として融解が進み、Vilkitsky海峡付近の海氷が大きく後退しています。その他、東シベリア海には北極海の中央から細く張り出した海氷が見られます。
Figure 4. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況
Figure 4は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。上で述べている通り、Vilkitsky海峡の海氷が無くなったことで通行が可能となったため、北東航路は全面的に開通しました。
北西航路の南回りルートでは、カナダ多島海のBarrow海峡北岸にあった海氷が航路を狭めていましたが、今週は海氷が後退し、先週よりも航行しやすい状況です。北西航路の北回りルートについては、Viscount Melville海峡などに海氷が残っているため、開通には至っていません。
Fugire 5はウェザーニューズで独自開発した海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。これによると、北極海の海氷域は一年で最も縮小した状態から再び増加に転じ、徐々に拡大していくことが予想されています。
モデルでは、10月に入るとシベリア沿岸で急速に結氷が進むことが予想されています。これは、水深の浅い沿岸域での水温低下が深い海域よりも速く進行し、広い範囲で結氷水温に達することによるものです。ただし、現在のモデルでは実際よりも過剰な結氷を予想している可能性があります。
北極海の海氷はその後も拡大を続け、冬には北極海の大半が海氷で覆われます。
Figure 5. モデルによる北極海の海氷予測