2010.09.30
秋を迎え、北極海の海氷域は急速な拡大期に入りました。先週まで開通していた北西航路(カナダ側)の南回りルートでは、航路上の海域の一部で結氷が始まり、航路が再び海氷で閉ざされつつあります。一方、先週開通した北東航路(シベリア側)では依然として開通した状態が続いています。
今後も北極海では結氷による拡大が続きます。北西航路では、既にカナダ多島海での広範囲な結氷が進んでいるために、今後数日中にも海峡が海氷で塞がれ、航路が閉じる見通しです。北東航路側での海氷の広がりは北西航路側に比べて遅くなりそうですが、1〜2週の内には再び海氷が張り出し、こちらも海峡から海氷で塞がれていくものと予想されます。
Arctic Western Arctic Eastern Arctic |
Figure 1a-1c. Sea ice extent of the entire Arctic(1a), western Arctic(1b), and eastern Arctic(1c)
Figure1aは北極海の海氷域面積の推移を示しています。北極海の海氷域が縮小から拡大に転じ、急速に増えているのがわかります。現在の面積はおよそ500万km2で、先週から50万km2ほど増えています。また、西半球側の面積(Figure 1b)は280万km2、東半球側の面積(Figure 1c)は220万km2で、いずれも増加傾向にあります。
Figure 2は現在の北極海の海氷域分布を示しています。先週の分布と比較すると、チュクチ海の北部やラプテフ海の北部など、沿岸から離れた高緯度の海域で海氷に覆われていなかった箇所を中心に海氷が張り出してきています。また、カナダ多島海でも海氷量が顕著に増えています。
Figure 3. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況.
Figure 3は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。航路状況は先週から大きくは変わらず、北東航路と北西航路の南回りルートがそれぞれ開通している状況です。ただし、カナダ多島海で海氷の結氷が進んでいる影響で、北西航路は徐々に海氷で閉ざされつつあり ます。具体的には、Barrow海峡で結氷し始めた海氷が航路を狭めているほか、カナダ多島海からBaffin湾に抜ける箇所でも海氷の張り出しが見られています。また、現在閉じている北西航路の北回りルートは、Viscount Melville海峡の海氷が顕著に増加し始めたことで、今期の開通の可能性は無くなりました。
Figure 4はウェザーニューズで独自開発した海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。北極海の海氷域は今後も拡大を続け、航路周辺にも広がっていくことが予想されています。
モデルでは、シベリア沿岸、特に東シベリア海やラプテフ海の沿岸で結氷が進み、広い範囲が海氷で覆われていくことが予想されています。これは、水深の浅い沿岸域での水温低下が深い海域よりも早く進行し、結氷水温により早く達することによるものです。ただし、現在のモデルでは実際よりも過剰な結氷を予想している可能性があります。
Figure 4. モデルによる北極海の海氷予測.