2010.10.07
本格的な秋を迎え、北極海の海氷域は急速に拡大しています。カナダ多島海や各海峡に海氷が張り出したことで、先週まで開通していた北西航路・北東航路は共に閉じたことが、衛星画像から確認されました。
Figure 1は今年の最小海氷域を10年前(2000年)と重ねたものです。2000年には夏でもシベリア沿岸やカナダ多島海に海氷が残っていましたが、今年はそのような海氷の大半が失われているのがわかります。
今夏を振り返ると、海氷域は最小でおよそ450
km2まで縮小し、観測史上3番目に少ない面積となりました。また、夏が始まる前に予測されていた通り、西半球側での融解が顕著に進行した結果、北西航路が9月9日に開通しました。それに続き北東航路も9月19日に開通したことで、2年ぶり、かつ観測史上2 度目の両航路同時開通となりました。その後、北西航路の開通は3週間以上、北東航路の開通は2週間ほど続きましたが、10月初旬のほぼ同時期に閉鎖しました。
閉鎖した北極海航路が今期中に再び開通する可能性も低いため、今期のレポートは今回で終了となります。来年以降も、Global Ice Centerでは北極海の海氷、および北極海航路の最新の状況をレポートしていきます。
Figure 1.
Figure 2aは北極海の海氷域面積の推移を示しています。北極海の海氷域は拡大が進み、現在の面積はおよそ540
km2で、先週から40
km2ほど増えています。西半球側の面積(Figure 2b)は310
km2、東半球側の面積(Figure 2c)は230
km2で、共に増加しています。北極海の海氷域は完全に拡大期に入ったことがわかります。
Figure 3は現在の北極海の海氷域分布を示しています。先週の分布と比較すると、M' Clure海峡やViscount Melville海峡などのカナダ多島海周辺で、海氷域が拡大していることが分かります。また、シベリア側は、チュクチ海〜カラ海にかけて、全体的に海氷面積が広がっていることが分かります。
Figure 4. 北東・北西両航路上の各海域における海氷状況
Figure 4は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。
北西航路では海氷域の拡大が進み、Barrow海峡において海氷密接度が9/10を越える氷が広がっています。またLancaster Sound〜Baffin湾にかけても氷が張りだしました。よって北西航路の南側のルートは完全に閉じた状態になりました。北東航路においても、Vilkitsky海峡で氷の張り出しが進んだことで、航路が閉ざされました。また東シベリア海に伸びる海氷がシベリア沿岸に迫っており、ここでも航路を塞ぎつつあります。
Figure 5はウェザーニューズで独自開発した海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。北極海の海氷域は今後も拡大を続け、航路全体に広がる見通しです。モデルでは、シベリア沿岸、特に東シベリア海やラプテフ海の沿岸で結氷が進み、広い範囲が海氷で覆われていくことが予想されています。また、カナダ多島海の南部でも結氷が進むことが予想されています。このような予測結果から、東西の両北極海航路上の海氷が後退し、今期中に再び航路が開通する可能性は低いものと見られます。
Figure 5. モデルによる北極海の海氷予測