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Weekly Report

2011.08.23


2011 GIC Weekly Report Vol.3
「北東・北西航路同時開通、これまでで最も早く」

今週のトピック

今月5日に開通した北極海北東航路に続き、北西航路も開通したことが、8月18日の衛星画像から確認できました。図1は開通した北西航路を現在の海氷分布と共に示しています。カナダ多島海を通る北西航路には複数の分岐点があり、南ルート(Southern Route)と北ルート(Northern Route)に大きく分けられますが、今回開通したのは南ルートです。南ルートでは、航路のほぼ中間にあたるLarsen湾やその周辺海域に海氷が残っていましたが、先週までに海氷密接度が大きく減少していたため、開通の可能性が高まっていました。北極海北東航路・北西航路が共に開通するのは、2008年・2010年に続き観測史上3度目の出来事です。また、今年は8月中旬というこれまでで最も早い時期での両航路開通となります。
北極海の海氷域は今後も縮小し、9月には最少のピークを迎えます。現在の海氷域面積は史上最小に迫る勢いで減少しているため、今後数週間の海氷域と航路状況の変化が注目されます。

Vilkitsky

図1: 北極海北西航路(南ルート、北ルート)と周辺の海氷分布状況(クリックで拡大)

海氷域の分布状況

Sea Ice Extent in the Arctic

 Arctic
 Western Arctic
 Eastern Arctic

図2:図2(a)-2(c) (a)北極海, (b)西半球北極海, (c)東半球北極海の海氷域面積(クリックで拡大)

Ice Image

図3: 北極海の海氷衛星画像(クリックで拡大)

図2は北極海の海氷域面積の推移を示しています。現在、北極海全体の面積はおよそ470万km2で、これは観測史上最少になった2007年(同時期450万km2)に次ぐ2番目に少ない面積です。海氷域は現在も縮小傾向にあり、先週から30万km2ほど減少しています。西半球側の面積(図2b)と東半球側の面積(図2c)をそれぞれ見ると、西半球側の海氷面積は少なく、270万km2と2008年(同時期260万km2)と同レベルの面積となっています。東半球側の面積は200万km2と、2007年(同時期180万km2)に次いで2番目に少ない面積です。
図3は現在の北極海の海氷分布を示しています。図の右側、カナダ多島海中の海氷は、先週に引き続き大部分が融解し、融け残った箇所も密接度の薄い氷が広がっているところが多くなっています。図の左側、シベリア沿岸域では、先週に引き続き東シベリア海やラプテフ海での融解が進んでいます。また、図の中心、北極点付近でも海氷の融解が進み、密接度が低くなっている箇所が見られます。

北極海航路上の海氷状況


Sea Ice Conditions Image

図4:北東・北西両航路上の各海域における海氷状況

図4は北極海北東航路(図中左、シベリア側)・北西航路(図中右、カナダ側)の通行可能性を示しています。今週の変化を衛星画像などから判断すると、北西航 路は、Larsen湾の西側に残っていた海氷が完全に融解したため、 Amundsen湾〜Larsen湾〜Barrow海峡を通る南側のルートで、通常船舶の航行が可能な状態となりました。 
一方で、カナダ多島海の北部を通る北ルートについては、Viscount Melville海峡などに海氷が残っているため、開通には至りませんでした。また、北東航路においては、北東航路では東シベリア海やVilkitsky海峡で氷の融解が進み、先週に引き続き開通している状況です。

モデルによる今後の予測

図5は、ウェザーニューズの海氷予測モデル"I-SEE-Engine"の予測結果です。北極海の海氷は今後も縮小を続けますが、その減少速度は徐々に緩やかになります。北西航路では、カナダ多島海の海氷が融解することで、開通した南ルートに続き、北ルートも開通する可能性があります。北東航路では、東シベリア海に張り出した海氷が更に後退することで、より航行のしやすい状況となります。

Model Prediction Image

図5: モデルによる北極海の海氷予測.

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